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ぜんぶ嘘なので気にしないでください。

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やっぱり恋は良い。

 

あんまり、「恋って良いですね」という作品は書いてこなかったつもりです。あんまり「こうしたつもり」とかいう話ばかりする人間にはなりたくない。でもそういうつもりでした。愛や恋は呪いのように書いてきたつもりでした。ほんとうは人を不幸にするばかりのこの感情が、ぼくたちには必要なのです、という形式をとってきました。世界はわたしたちを不幸にするものばかり、でもその不幸が、なんのためにかは分からないけれど必要なんでしょう。魔法のために必要なのかもしれないし、世界のために必要なのかもしれないし、閻魔のために必要なのかもしれない。ほんとうに時たまに、まぐれみたいに、恋や愛はひとを幸せにすることがあるのかもしれない。でも大抵は違う。恋の思い出は忘れがたいけど、それは幸せだからではなくて、呪いだからです。そういうふうに書いてきた。

 

でも、やっぱり恋は良い。

 

なぜいいのだろう、きらめくのだろう。終わりがあるからだろうか。人間は恋をしなくなってからのほうが長く生きるのだということ。ほとんど恋をしない人間もじつはいるんだということ。

 

「じゃあどうしてきみはおれがすきなの」とあなたがひらがなで喋る。男性はいつもひらがなで喋る。ぎりぎり聞き取れるぐらいの解像度にしか見えない。どうしてこの人がすきなんだろう、と、いつも思う。理由がわかったことはほとんどない。大抵、ほぼ話をしたことがない人のことを好きになる。かれはなにもしなかった、わたしを見もしなかった、だからきっとわたしがかれを好きなんだということは絶対にだれにも分からなかっただろう。それでも好きだった、という話が好きなので、泉鏡花の「外科室」がすきです。

 

 *

 

 

愛はうまれたあと、それを証明するまで、時間がかかる。ほんとうは証明なんてする必要はないし、だれにも見せる必要はない。でも自分がそうしたくなくても、証明を迫られることはあるのかもしれない。とくに愛する相手が愛の証明を脅迫してきたならば、それにこたえようと努力するしかないのかも。

 

離れていても愛しています。二度と会えないのに愛しています。あなたは宇宙の向こうに行ったんだとそう信じて諦めています。ほんとうは、がんばったら一時間で会える距離にいるのかもしれないし、もうずっと前に死んでしまっているのかもしれない。