2020-01-01から1年間の記事一覧
「もう小説を書けるようにはならない」と天啓を得たように思いこむ日がわたしにはあるんだけど、でもそういう日って、じゃあなにが出来るっていうの? と自分にもういちど努めて優しく聞いてみても、「なあんにも出来ない」なんて言い出す。なにもかもがゼロ…
きみもぼくも、少しずつ大人になれるといいよね。そんなの無理かな。だってもう何十年も経っちゃったもんね。それでも大人になれないんだとしたら、ぼくたちに必要なのは時間じゃなくて決意のほうだよ。決断力とバランス、あるいはバランスと決断力。ぼくた…
恋人を閉じ込めたことがある。 箱に詰めて綺麗にパッキングして、二度と出てこれないように架空の住所をあて先にして郵送した。送り元の署名はしなかったのに、数年に一度ぐらいの頻度で恋人は帰ってくる。さすがにお互いもう交際中の認識はないから、「元」…
ほんとうは相手の気持ちなんてひとつも分からないくせに、お互いになにかを伝え合っているつもりでいる。言葉があるせいだ、と思う。記号で伝え合っている気持ちになっているから、伝わらない寂しさに出会ってしまった。 でもあるいは記号があるからこそ咀嚼…
やっぱり恋は良い。 あんまり、「恋って良いですね」という作品は書いてこなかったつもりです。あんまり「こうしたつもり」とかいう話ばかりする人間にはなりたくない。でもそういうつもりでした。愛や恋は呪いのように書いてきたつもりでした。ほんとうは人…
言葉なんて教えなければよかった、と今更ながらにルルエは後悔をした。喋らなければならない理由なんてなかった。彼が言葉を覚えなくてはならない理由なんてなかった。ではなぜ「あ」「い」「う」「え」「お」の母音の発声からひとつひとつ丁寧に教えてやっ…